健康経営に欠かせないプレゼンティーズム改善の考え方

近年、健康経営に関する重要な要素として「プレゼンティーズム」というキーワードが注目されています。

本記事では、プレゼンティーズムの定義から、健康経営との関連性、アブセンティーズムとの違い、改善の考え方まで詳しく解説します。「プレゼンティーズムって何？」という健康経営の推進担当者や福利厚生担当者の方々に、プレゼンティーズム改善のための具体的な戦略をお伝えします。

プレゼンティーズムとアブセンティーズム

プレゼンティーズムとアブセンティーズムは、従業員の健康状態が企業の生産性に与える影響を示す重要な指標です。この章では、両者の定義と違い、そしてプレゼンティーズムが起こる背景について詳しく解説します。

プレゼンティーズムとは

プレゼンティーズムとは、従業員が出勤していても、健康上の問題により本来の能力を発揮できず、生産性が低下している状態を指します。

例えば、頭痛や腰痛、メンタルヘルスの問題を抱えながら仕事をしている状態がこれに当たります。プレゼンティーズムは目に見えにくい問題であるため、多くの企業でその影響が過小評価されがちです。しかし、実際には企業の健康関連コストの約８割を占めるともいわれており、その対策は健康経営において非常に重要です。

アブセンティーズムとの違いは何？

アブセンティーズムとは、心身の不調など健康上の理由で従業員が欠勤することを指します。

プレゼンティーズムとアブセンティーズムの主な違いは、従業員が職場に存在しているかどうかです。アブセンティーズムは欠勤という形で目に見えるため、影響を把握しやすい一方で、プレゼンティーズムは従業員が出勤しているので、その実態が見えにくいという特徴があります。しかし、プレゼンティーズムによる生産性の損失は、アブセンティーズムよりも大きいとされており、企業にとってより深刻な問題となっています。

プレゼンティーズムが起きる背景とは

プレゼンティーズムが起こる背景には、様々な要因があります。

1. 仕事への責任感：
   自分が休むと同僚に迷惑がかかるという思いから、体調不良でも出勤する。
   
   
2. 職場の雰囲気：
   休みを取りにくい職場環境や文化。
   
   
3. 経済的理由：
   有給休暇が少ない、または無給の休暇を取ることへの抵抗感。
   
   
4. 慢性的な健康問題：
   完治が難しい持病を抱えている。
   
   
5. 生活習慣の乱れ：
   ヘルスリテラシーが低く、偏った食生活が続いて体調管理がおろそかになる。

これらの背景を理解し、適切に対処することが、プレゼンティーズム改善の第一歩となります。

健康経営がプレゼンティーズムの軽減につながる理由

健康経営は、従業員のプレゼンティーズム改善にも役立ちます。職場環境の整備や従業員の健康増進への注力がプレゼンティーズムの軽減につながる理由を見てみましょう。

1. 予防的アプローチ：
   健康経営では、従業員の健康状態を定期的にモニタリングし、問題が深刻化する前に対処できます。
   
   
2. 環境整備：
   職場環境の整備により、従業員の健康リスクを低減できます。
   
   
3. 意識改革：
   健康経営の推進により、従業員の健康意識が高まり、自己管理能力が向上します。
   
   
4. 組織文化の変革：
   社内に健康を重視する文化が醸成され、体調不良時に休みやすい雰囲気が作られます。

これらの取り組みにより、プレゼンティーズムの主な原因である健康問題や職場環境の課題に対処できます。

プレゼンティーズムを改善するための戦略

プレゼンティーズムを改善するための戦略には、以下のようなものがあります。

1.健康診断の徹底と事後フォロー

健康診断を定期的に実施することは、従業員の健康状態を早期に把握するために重要です。病気や健康リスクを早期に発見し、対処することで、病気の進行を防ぐことができます。診断後には、必要に応じて事後フォローアップを行い、適切な治療や生活習慣の改善をサポートすることが大切です。これにより、従業員の健康が守られ、仕事に対するパフォーマンスも向上します。

2.メンタルヘルスケアの充実（ストレスチェック、カウンセリングなど）

メンタルヘルスの問題は、プレゼンティーズムの重要な要因です。従業員が精神的に健康であることは、業務の生産性や集中力に大きな影響を与えます。ストレスチェックを定期的に行い、精神的な健康状態を把握するとともに、カウンセリングサービスやサポート体制を提供することが重要です。従業員がストレスや精神的な問題を抱えている場合に、早期に支援することが、長期的な健康維持に繋がります。

3.柔軟な勤務制度の導入（在宅勤務、フレックスタイムなど）

柔軟な勤務制度を導入することで、従業員は仕事とプライベートをうまく調整でき、仕事のストレスを軽減できます。在宅勤務やフレックスタイム制度は、通勤時間の削減や家庭の事情に応じた勤務が可能となり、健康的な生活を送りやすくなります。これにより、従業員の身体的および精神的な健康が守られ、仕事に対する集中力や効率が向上します。

4.健康増進プログラムの提供（運動促進、栄養指導など）

健康増進プログラムを提供することで、従業員の健康意識を高め、日々の生活習慣を改善するサポートができます。運動習慣を身につけることで、身体的な健康が向上し、エネルギーや集中力も高まります。栄養指導を行うことで、食生活の改善が促され、生活習慣病の予防にも繋がります。企業が積極的に健康管理に関わることで、従業員の長期的な健康を支援することができます。

5.休暇取得の促進と休暇中の代替要員の確保

十分な休養を取ることは、身体的・精神的な健康を保つために非常に重要です。企業は、従業員が休暇を取得しやすい環境を作り、休暇中の業務負担を軽減するために代替要員を確保することが必要です。これにより、従業員は心身のリフレッシュができ、仕事に戻った際には、より高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

プレゼンティーズム改善の考え方

プレゼンティーズムの改善には、戦略的なアプローチが必要です。この章では、経営戦略マップの活用や改善指標の作り方など、具体的な改善の考え方について解説します。

経営戦略マップの活用

経営戦略マップとは、健康経営の取り組みと経営目標の関連性を可視化するツールです。

このマップを活用することで、以下のメリットがあります。

1. 健康施策と経営成果の因果関係の明確化
2. 各施策の位置づけと優先順位の把握
3. ステークホルダーとの共通認識の形成

経営戦略マップを作成する際は、「健康投資」「従業員の行動変容」「健康状態の改善」「経営成果」といった要素を階層的に配置し、それぞれの関連性を矢印で示します。

改善指標の作り方

プレゼンティーズム改善の進捗を測るためには、適切な指標設定が不可欠です。以下の3つの視点から指標を設定してみましょう。

１最終的な目標指標（プレゼンティーズム改善）

プレゼンティーズムの改善度を直接測定する指標です。

例）

• 「WHO-HPQ」（社員のプレゼンティーズムを測る指標としてWHOが定義したもの）
• 従業員の自己申告による生産性低下の度合い

２従業員の意識・行動変容に関する指標（パフォーマンス指標）

健康行動の変化を測定する指標です。

例）

• 運動習慣のある従業員の割合
• ストレス解消法を持つ従業員の割合
• 適切な睡眠時間を確保している従業員の割合

３健康投資の取り組み状況に関する指標（アウトプット指標）

健康経営施策の実施状況を測定する指標です。

例）

• 健康セミナーの開催回数と参加率
• 健康診断の受診率
• メンタルヘルス相談の利用率

これらの指標を組み合わせることで、プレゼンティーズム改善の取り組みを多角的に評価できます。

健康経営戦略マップ例

健康経営戦略マップは、健康経営の取り組みと経営成果の関連性を可視化するツールです。以下に、健康経営戦略マップの例をご紹介します。

このマップは、健康投資（インプット）から最終的な経営成果（アウトカム）までの流れを示しています。例えば、「健康セミナーの実施」という健康投資が、「健康意識の向上」という従業員の意識変容を経て、「生活習慣の改善」という行動変容につながり、最終的に「プレゼンティーズムの改善」という成果に結びつくという因果関係が可視化されています。

プレゼンティーズム改善のポイント

プレゼンティーズムの改善には、戦略的なアプローチと継続的な取り組みが必要です。そのための重要なポイントについて解説します。

従業員の「行動」と「その後の結果」を切り分けて考える

プレゼンティーズム改善の取り組みを評価する際は、従業員の行動変容とその結果を明確に区別することが重要です。

行動（アウトプットとパフォーマンス）

• 健康診断受診率の向上
• 運動習慣のある従業員の増加
• ストレス管理プログラムへの参加率

結果（アウトカム）

• プレゼンティーズムスコアの改善
• 従業員の生産性向上
• 医療費の削減

この区別により、どの施策が効果的であるか、また改善が必要な領域はどこかを明確に把握できます。

PDCAサイクルの仕組み構築

プレゼンティーズム改善には、継続的にPDCAサイクルを回す必要があります。

1. Plan（計画）：現状分析に基づいた目標設定と施策の立案
2. Do（実行）：計画に基づいた施策の実施
3. Check（評価）：指標に基づいた効果測定と分析
4. Act（改善）：分析結果を踏まえた施策の改善と次期計画への反映

効果検証の際の調査とデータ分析活用の重要性

効果的なPDCAサイクルを回すためには、適切なデータ収集と分析が必須です。定期的なサーベイ（アンケート調査など）の実施や、健康診断データ、勤怠データなどの分析を通じて、施策の効果を客観的に評価します。これにより、エビデンスに基づいた施策の改善が可能となります。

WellWaの健康経営支援サービス

WellWaは、企業の健康経営推進をサポートする包括的なサービスを提供しています。プレゼンティーズム改善に焦点を当てた支援も行っています。

健康経営のPDCAを回すための伴走支援

WellWaの健康経営支援サービスは、以下のような特徴を持っています。

1. データ分析支援：
   ・従業員の健康データやプレゼンティーズムに関するデータの収集と分析
   
   
2. 戦略立案支援：
   ・プレゼンティーズム改善のための具体的な施策提案
   
   
3. 施策実施支援：
   ・健康セミナーや運動プログラムの提供
   ・適正飲酒
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4. 効果測定と改善支援：
   ・定期的なサーベイ実施と結果分析
   ・PDCAサイクルに基づいた継続的な改善支援

これらのサービスにより、企業は効果的かつ持続的なプレゼンティーズム改善の取り組みを実現できます。

まとめ

プレゼンティーズムの改善は、企業の持続的成長に直結する課題です。健康経営を推進し、適切な指標と戦略を用いることで、従業員の生産性向上と職場環境の改善が実現します。WellWaの支援を活用し、より効果的な健康経営を実践してください。