
人的資本を“見える化”する7つの主要指標とは?
本記事では、成果・プロセス・環境の3視点からの活用法とエンゲージメントや離職率、人的投資額など7つの主要指標、さらにWellWaによる実践的アプローチを解説します。
目次[非表示]
- 1.人的資本の「見える化」が今、経営に求められる理由
- 2.人的資本指標の全体像と可視化のアプローチ
- 2.1.成果・プロセス・環境の3つの視点
- 2.2.定量指標と定性指標の組み合わせ
- 3.経営戦略と直結する「7つの人的資本指標」
- 3.1.1. 従業員エンゲージメントスコア
- 3.2.2. 離職率・定着率(部門別・属性別)
- 3.3.3. 人的投資額(研修・キャリア支援)
- 3.4.4. リーダーシップ開発比率
- 3.5.5. DEI指標(多様性・公平性・包括性)
- 3.6.6. 従業員のスキル保有状況とギャップ分析
- 3.7.7. 人的資本ROI(人財投資に対する経済効果)
- 4.健康経営から人的資本経営へ:WellWaに学ぶ最新アプローチ
- 5.まとめ:人的資本指標は経営成果につながる“資産”である
人的資本の「見える化」が今、経営に求められる理由
そもそも「人的資本経営」とは何か?
人的資本経営とは、従業員を「コスト」ではなく「資本(資産)」としてとらえ、戦略的に人財に投資し、企業価値の向上を図る考え方です。スキルやモチベーション、健康や働きやすさといった“無形資産”を定量・定性の両面で評価し、経営判断に活用していくことが特徴です。
従来の人事管理では、採用数や研修実施といった施策の“実施そのもの”が評価されがちでしたが、人的資本経営では「その投資がどんな成果を生んだのか」に焦点が当たります。
注目される背景:ISO30414と人的資本可視化指針
人的資本の可視化が注目される背景には、国際的なガイドラインの整備があります。なかでも代表的なのが、2018年にISO(国際標準化機構)が発行した「ISO30414」。人的資本情報の開示に関する国際指標で、14の主要領域にわたるKPIが定義されています。
日本においても、経済産業省が「人的資本可視化指針」を公開し、有価証券報告書での情報開示義務が2023年3月期からスタートしました。企業はもはや「人的資本をどう評価するか」ではなく、「どのように示すか」を問われているのです。
投資家・社会からの期待と企業へのプレッシャー
ESG投資の拡大により、企業の人的資本への取り組みは、投資判断に直結する要素となりました。特にグローバル投資家は、従業員のエンゲージメント、離職率、多様性といった非財務情報に強い関心を持っています。
人的資本指標の全体像と可視化のアプローチ
成果・プロセス・環境の3つの視点
人的資本の指標は、大きく3つに分類できます。
- 成果指標:従業員のパフォーマンスや離職率など、施策の結果を示すもの
- プロセス指標:研修時間や育成制度の導入状況など、取り組みの実行度を示すもの
- 環境指標:心理的安全性、働きやすさ、多様性など、働く環境の質を示すもの
この3分類を活用すれば、「何をしたか」「どんな状態か」「どうなったか」を整理しやすくなります。
定量指標と定性指標の組み合わせ
人的資本経営では、数字で測れる「定量指標」と、主観的評価や自由回答などの「定性指標」を組み合わせて使うことが重要です。
例えば、離職率(定量)だけでなく、「なぜ辞めたのか」「どのように感じていたか」といったエンゲージメント調査(定性)を補完的に使うことで、より深い洞察が得られます。
経営戦略と直結する「7つの人的資本指標」
1. 従業員エンゲージメントスコア
エンゲージメントスコアは、従業員がどれだけ企業に共感し、自発的に貢献しようとしているかを可視化する指標です。Gallup社や東京大学SPQモデルなど、様々な測定手法がありますが、いずれも「仕事のやりがい」「上司への信頼」「会社の将来性」などを軸に算出され、このスコアが高いほど、離職率は低く、生産性・創造性・顧客満足度が高い傾向にあります。
出典:Gallup公式サイト
2. 離職率・定着率(部門別・属性別)
離職率や定着率は、人的資本の“健全性”を示す基本指標です。特に、年齢層・部門・性別といった属性別に分けて分析することで、職場の課題や管理職のマネジメント品質が明らかになります。
3. 人的投資額(研修・キャリア支援)
研修費用、キャリア支援制度の利用率、リスキリングへの支出などを定量的に示すことで、企業の成長意欲と人財重視の姿勢を可視化できます。「1人あたり投資額」や「投資対象の分布」も合わせて報告することで、より説得力が高まります。
4. リーダーシップ開発比率
未来の組織を担うリーダーをどれだけ育成しているかは、中長期的な企業価値に直結する指標です。リーダーシップ研修の参加率、内部登用比率、女性管理職比率などが具体例として挙げられます。
5. DEI指標(多様性・公平性・包括性)
DEI(Diversity, Equity, Inclusion)は、人的資本経営における“文化”を映す鏡です。性別・年齢・国籍などの属性多様性だけでなく、公平な評価制度の有無、インクルーシブな職場文化の定着度合いを測る必要があります。
6. 従業員のスキル保有状況とギャップ分析
企業戦略と人財戦略をつなぐには、「どんなスキルを持っているか」「どんなスキルが不足しているか」を明らかにする必要があります。
特にDX・サステナビリティ分野では、新たなスキルの需要と既存人財とのギャップ分析が重要です。
7. 人的資本ROI(人財投資に対する経済効果)
人的資本ROIとは、「人財投資によって得られる生産性・利益改善効果」を示す指標です。研修後の売上向上や、健康施策によるプレゼンティーズム改善などが対象となります。
健康経営から人的資本経営へ:WellWaに学ぶ最新アプローチ
“楽しい健康”が人的資本を活性化する理由
人的資本を高めるには、従業員の“状態”を整えることが第一歩です。WellWaは、健康行動をチーム単位で楽しむ設計にすることで、主体性・一体感・連帯感といった人的資本の質的向上を実現しています。
「おいしい健康」施策が満足度と参加率を両立
WellWaでは、貯めたポイントを使って、オフィス内の飲料や惣菜と交換できる制度が導入されています。健康という“課題解決”と、食という“楽しさ”がつながることで、参加率の底上げと満足度の向上を両立しています。
投資対効果を見える化するサーベイモデル
キリングループが開発した独自サーベイは、エンゲージメント、健康、コミュニケーション、メンタル状態などを測定し、それを生産性に落とし込む仕組みです。この”見える化”が、人的資本経営において経営層の理解と予算獲得を後押しします。
まとめ:人的資本指標は経営成果につながる“資産”である
人的資本経営は、経営戦略に「人」という視点を重ねる取り組みです。そこに健康経営やWell-being施策が加わることで、持続可能な組織づくりの土台が整います。可視化された数値はゴールではありません。大切なのは、それを起点に「行動が変わる」「対話が生まれる」「施策が改善される」という変化です。
WellWaは、「始めやすく・続けやすく・見える化できる」実践的な選択肢として、人的資本経営の第一歩となります。人的資本経営における可視化とアクションの両立は簡単ではありませんが、自社に合ったツールと仕組みの選定が成功のカギとなります。