
セルフケアとラインケアで実現する「強い職場」とは?健康経営担当者が押さえるべきメンタルヘルス支援方法を解説
近年、ストレスやメンタル不調を理由とした休職・離職が増加しています。メンタルヘルスの問題は、個人のパフォーマンス低下にとどまらず、組織全体の生産性や職場の雰囲気にも大きな影響を及ぼします。
こうした背景を踏まえ、いま企業に求められているのは、「誰かが支える」仕組みではなく、「みんなで支え合うメンタルケア体制」の構築です。
その基盤となるのが、従業員一人ひとりが取り組む「セルフケア」と、上司や管理職が行う「ラインケア」。本記事では、この二つの役割を整理しながら、健康経営の視点から実践的なメンタルヘルスのあり方を解説します。
目次[非表示]
職場のメンタルヘルス課題と「ケアの分担」概念
働く人のストレス状況と企業リスクの現実
厚生労働省の「労働安全衛生調査(2024)」によると、約6割の労働者が「強いストレスを感じている」と回答しています。ストレスが蓄積すると、モチベーションの低下や人間関係の悪化、プレゼンティーズム(出勤していても集中できていない状態)を招き、生産性損失につながります。
さらに、休職・離職の増加によって、採用や教育コストの増大、チーム機能の低下といった経営リスクも顕在化しています。こうした課題に対応するには、「セルフケア」「ラインケア」「事業場内ケア」「事業場外ケア」という4つの役割を明確に分担し、組織全体で支え合う体制を築くことが重要です。
出典:厚生労働省「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)の概況』」
厚労省が定める4つのメンタルケア体制
厚生労働省の「労働者の心の健康づくりのための指針」では、次の4つを柱としたケア体制を提唱しています。
セルフケア:従業員自身がストレスに気づき、対処する
ラインケア:上司・管理職が部下の変化を察知し、支援する
事業場内ケア:産業医や保健師など専門家が職場内で対応する
事業場外ケア:EAP(従業員支援プログラム)や医療機関など、外部の専門資源を活用する
この4層をバランスよく整備することが、職場のレジリエンス(回復力)を高める鍵となります。
出典:厚生労働省「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」
健康経営の基盤となる「セルフケア」と「ラインケア」
健康経営の実践では、特に「セルフケア」と「ラインケア」が重要な基盤です。個人が自らの心身状態を整え、上司が部下の変化に早期に気づくことで、不調の未然防止(一次予防)が可能になります。
例えば、キリンビバレッジが提供しているWellWa(ウェルワ)では、ストレスマネジメントやセルフケアをテーマにしたセミナーを開催し、従業員が「自分の心の状態に気づく力」を養う支援を行っています。また、管理職向けにはラインケアの実践方法やコミュニケーション研修を実施し、個人と組織の両輪でメンタルヘルスを支える文化づくりを推進しています。
セルフケアとは?個人ができるメンタルヘルス対策
セルフケアの定義と目的
セルフケアとは、自身の心と体の状態を把握し、早めにケアすることです。厚生労働省はこれを「一次予防(不調を未然に防ぐ)」と位置づけています。
近年はリモートワークや業務のデジタル化により、自分のストレスに気づきにくい環境も増えています。だからこそ、心身の小さな変化を観察し、違和感がでた段階で休息や相談、調整を行うことが大切です。
出典:厚生労働省 こころの耳 用語解説「一次予防」
ストレスサインに気づくポイント
ストレスは、心理・身体・行動の3つの面に現れます。
身体的:眠れない、食欲が落ちた
心理的:集中できない、怒りっぽくなる
行動的:ミスが増える、人との関わりを避ける
こうしたサインを日常的にモニタリングすることが、メンタル不調の予防につながります。最近では、気分記録アプリや睡眠データを可視化できるツールも増えており、企業が社員のセルフケアを支援する仕組みを導入する動きが広がっています。
セルフケアの基本習慣
セルフケアの基本は、生活リズムを整え、心にゆとりをつくることです。特に効果的とされるのが、以下の4つの習慣です。
睡眠:一定のリズムで睡眠をとり、集中力と感情の安定を保つ
運動:1日20分程度のウォーキングがストレス軽減に効果
マインドフルネス:呼吸に意識を向け、今この瞬間に集中する
相談:上司や同僚、外部カウンセラーに話すことで孤立を防ぐ
WellWaでは、こうした行動をチャレンジ形式で可視化し、社員同士が励まし合いながら取り組める「楽しみながら整えるセルフケア文化」を育んでいます。
企業が従業員のセルフケアを支援する仕組み
セルフケアを社員任せにするのではなく、企業が支える仕組みを持つことが健康経営の基本です。その手段として、次の3つのアプローチが挙げられます。
教育:メンタルヘルス研修やセミナーで正しい知識を提供
ツール導入:気分・睡眠・ストレスを可視化するアプリやウェアラブルデバイスを活用
環境整備:リフレッシュスペースの設置や勤務時間の柔軟化など、心身を整えやすい職場づくり
企業がサポート体制を整えることで、従業員は「守られている」「話せる」と感じやすくなり、セルフケア行動が自然に定着します。
ラインケアとは?管理職が担うメンタル支援
ラインケアの定義と役割
ラインケアとは、上司や管理職が部下のストレスや不調を早期に察知し、必要に応じて支援・専門家につなぐ取り組みです。セルフケアが「個の力」だとすれば、ラインケアは「組織の力」です。
一次予防として働きやすい環境を整え、二次予防として不調に気づき、迅速に対応することが、管理職の大切な役割です。
セルフケア×ラインケアがつくる「強い職場」
心理的安全性と対話の促進
セルフケアとラインケアは、相互に支え合うことで効果を発揮します。社員が自分のストレスに気づき(セルフケア)、上司が声をかけ支援する(ラインケア)関係が築かれると、早期発見・早期対応が可能になります。
その土台となるのが心理的安全性です。部下が安心して「最近少ししんどい」と話せる環境をつくるために、管理職は「聴く姿勢」を示すことが大切です。週1回の1on1で「今の気分は10点中いくつ?」と尋ねるなど、軽い対話を取り入れるだけでも変化が生まれます。また、WellWaの「チャレ活」機能を活用すれば、睡眠改善などの行動をチームで共有し、互いに支え合う文化を醸成できます。
データで見える化するメンタルケア
セルフケア・ラインケアを効果的に運用するためには、感覚だけでなくデータに基づく現状把握が不可欠です。その代表的な手法が「ストレスチェック」の活用です。
ストレスチェックの結果を活用し、部署ごとの傾向を把握して改善に生かすことが重要です。
高ストレス比率が高い部署 : 業務量・コミュニケーション頻度を見直す
上司支援スコアが低い部署 : ラインケア研修を強化
睡眠・疲労スコアが低い層 : 睡眠改善セミナーやWellWa活用で支援
実践のステップ:現状把握から文化定着まで
現状把握:従業員・管理職・産業医・人事の連携状況を整理
まず取り組むべきは、社内のメンタルヘルス体制の「見える化」です。誰がどの段階で支援しているのか、どの情報が共有されているのかを整理しましょう。
従業員:セルフケアの知識や行動はどの程度根づいているか
管理職:ラインケア研修の受講状況やスキルレベル
産業医・保健師:相談ルートや連携頻度
人事:制度・評価・労務の観点からの支援体制
この整理を行うことで、どの部分が弱いのか(教育不足・連携不足など)が明確になります。
導入フェーズ:WellWaなどツールを活用した社内浸透
現状を把握したら、次は「実践を支えるツール導入」です。WellWaでは、睡眠・活動量などを記録しながら、社員が楽しみながらセルフケアを継続できる環境を整えています。
さらに、管理職向けにはラインケアをテーマにしたオンラインセミナーやケーススタディも提供されており、職場の対話力を高めることができます。このような仕組みを導入することで、健康経営が「制度」ではなく「文化」として根づきやすくなります。
評価と改善:PDCAで継続的に改善するメンタルヘルス体制
メンタルヘルス対策は、一度導入して終わりではありません。PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を意識して、定期的に評価と改善を行うことが重要です。
Plan(計画):健康経営の目的と重点施策を明確に設定
Do(実行):セルフケア教育やラインケア研修、アプリ導入を実施
Check(評価):サーベイで現状分析
Act(改善):改善策を次年度施策に反映し、持続的な改善へ
このサイクルを社内に定着させることで、メンタルヘルス支援が「特別な取り組み」ではなく、「日常的な経営基盤」として機能するようになります。
まとめ
セルフケアとラインケアは、メンタルヘルス対策の両輪です。個人が自らの変化に気づき、上司が寄り添い支援することで、企業は「人財に強い組織」へと成長します。さらにWellWaを活用すれば、データに基づく支援と行動変容を促す「次世代型メンタルヘルス経営」が実現できます。
健康経営担当者は、制度設計だけでなく、人と人が支え合う文化づくりを意識することが大切です。今日から、自社にとっての「ケアの分担と連携」を見直し、社員が安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。


