
人事主導で実現するウェルビーイングマネジメント|制度が機能する職場づくりと人的資本経営の実践
ウェルビーイング施策を進めるうえでネックとなる背景をひも解き、人事担当者が直面しがちな課題を乗り越えるための具体的なアプローチについて解説します。
目次[非表示]
- 1.ウェルビーイングマネジメントとは何か?その定義と組織での意義
- 1.1.ウェルビーイングマネジメントとは
- 1.2.経営・人事における意味と重要性
- 2.いま、なぜウェルビーイングマネジメントが必要なのか|人的資本経営や働き方改革との関連
- 2.1.社会的背景:人的資本経営・離職リスク・働き方改革
- 2.2.組織課題と従業員ニーズの多様化
- 2.3.経営戦略との連動が求められる時代
- 3.マネジメントの難所とつまずきやすい課題
- 3.1.施策が失敗する4つの理由
- 3.2.施策を軌道に乗せるために必要な要素とは?
- 4.ウェルビーイング施策の設計方法と導入ステップ
- 4.1.必要な施策と実際の取り組み例(健康・心理・社会的側面)
- 4.2.社内ニーズをどう把握するか:サーベイ・1on1・ピープルデータの活用術
- 4.3.フェーズ別実行ステップと推進のためのステークホルダー整理
- 5.人事が果たすべき役割と社内を動かすためのアプローチ
- 6.ウェルビーイング導入に関するよくある悩み・Q&A
- 7.まとめ
ウェルビーイングマネジメントとは何か?その定義と組織での意義
ウェルビーイングマネジメントとは
ウェルビーイングマネジメントとは、従業員一人ひとりの身体的・精神的・社会的に良好な状態を、組織全体で支援・向上させていく体系的な仕組みを指します。単発的な施策にとどまるのではなく、データを継続的に収集・分析し、PDCAサイクルを回しながら改善し続ける運用が求められます。その本質は、単なる健康支援や福利厚生の提供ではありません。働く環境や人間関係、キャリア形成の支援まで含めた「包括的な幸福支援」こそが、ウェルビーイングマネジメントの核心です。
経営・人事における意味と重要性
経営層にとっては、エンゲージメント向上や生産性向上、離職率低下に直結する重要な投資領域であり、人事部門にとっては、採用力強化や組織活性化、人的資本開示対応を支える戦略施策となります。つまり、ウェルビーイングマネジメントは「人事だけの取り組み」ではなく、経営戦略の一部と捉えるべき領域なのです。
いま、なぜウェルビーイングマネジメントが必要なのか|人的資本経営や働き方改革との関連
社会的背景:人的資本経営・離職リスク・働き方改革
企業を取り巻く環境は大きく変わってきています。人的資本経営が国際的にも加速しており、ISO30414指針や国内ガイドラインをもとに、人的資本の可視化と開示が求められるようになっています。また、Z世代を中心に「働きがい」を重視する志向が強まり、エンゲージメント施策の重要性は一段と高まっています。加えて、働き方改革の流れを受けて、柔軟かつ多様な働き方への対応も不可避となっています。こうした潮流のなか、従業員一人ひとりのウェルビーイングを組織的にマネジメントし、企業の持続可能性を支える基盤をつくることが、今まさに求められています。
組織課題と従業員ニーズの多様化
現代の職場では、従業員一人ひとりが置かれた状況や価値観が大きく異なっており、従来の画一的な人事施策では対応しきれない時代になっています。キャリア志向、ライフステージ、家庭環境、健康状態など、個々のニーズはますます複雑かつ多様化しており、働きがいやウェルビーイングに対する期待も一様ではありません。
たとえば、「成果よりも安定性を重視する層」「自己成長やスキル習得を重視する層」「仕事と家庭の両立を優先する層」など、社内にはさまざまな価値観が共存しています。こうした多様なニーズに対応するには、パーソナライズされた支援や選択肢を提供する柔軟な仕組みが求められます。ウェルビーイングマネジメントは、こうした個別ニーズを組織として的確に把握し、応答するための有効なアプローチとなるのです。
経営戦略との連動が求められる時代
人的資本を戦略的に捉える流れが加速するなか、ウェルビーイングは単なる福利厚生の枠を超えて、経営課題の一部として位置づけられるようになっています。人財の確保・定着・育成は企業の成長を左右する重要要素であり、従業員のウェルビーイングを高めることは、その根幹に直結します。
加えて、人的資本に関する情報開示が義務化されつつある現在、エンゲージメントスコア、健康関連指標、離職率などの数値は、企業価値を左右する投資家やステークホルダーへの重要な説明材料となっています。ウェルビーイング施策は、こうした人的資本情報の改善にも貢献するため、今や経営戦略と一体で設計されるべき領域です。人事主導で進めるだけではなく、経営層の意思と戦略的視点を持ち込むことが、施策成功の鍵となるでしょう。
マネジメントの難所とつまずきやすい課題
施策が失敗する4つの理由
施策が形骸化し、社内で機能しないケースが散見されますが、4つの理由が考えられます。
- 導入段階で目的が明確化されておらず、情報が共有されていない
- 一方的な施策で、現場の声が反映されていない
- 現場マネージャーの施策推進に対する消極的な姿勢
- 成果の可視化・フィードバックが不十分
これらの課題を乗り越えられるかどうかが、施策の成否を左右します。
施策を軌道に乗せるために必要な要素とは?
施策導入時から全社展開を目指したり、トップダウンの指示型で進めたりする組織は、現場の無関心を招いて施策が頓挫しがちです。まずは、小規模な部署でのパイロット導入(試験導入)や、ウォーキングチャレンジなどテーマを絞った施策からスタートしましょう。参加希望者を募るボランタリー型で進めることで、徐々に社内に浸透させることができます。ウェルビーイングマネジメントは、大きな改革ではなく、段階的に実践を積み重ねることで文化として定着します。
ウェルビーイング施策の設計方法と導入ステップ
必要な施策と実際の取り組み例(健康・心理・社会的側面)
効果的なウェルビーイング施策を設計するためには、まず身体的・精神的・社会的な側面をバランスよく支援する発想が必要です。たとえば、健康施策として運動促進プログラムや睡眠改善キャンペーンを行い、健康診断後のフォローアップも行います。心理支援としてはマインドフルネス講座やストレスチェック後の対応、1on1面談制度を取り入れます。さらに、社会的支援ではチームビルディングイベントや部署を横断したコミュニケーション活性化施策を取り入れ、職場での「つながり」を強化します。
社内ニーズをどう把握するか:サーベイ・1on1・ピープルデータの活用術
社内ニーズの把握には、ウェルビーイングサーベイやエンゲージメントサーベイを活用しつつ、1on1ミーティングで現場のリアルな声を集めることが有効です。加えて、健康診断結果や勤怠データ、離職率の推移といったピープルデータも参考にしながら、定量・定性の両面で課題を把握していきましょう。
フェーズ別実行ステップと推進のためのステークホルダー整理
施策導入は、段階的に進めることが成功への近道です。最初に現状を把握し、課題を棚卸ししたうえで、目的設定と施策設計、予算確保を行います。次にパイロット運用で小さく試し、フィードバックを収集しながら改善を重ね、最後に制度化して拡大展開していく流れが理想です。このプロセスを支えるためには、経営層、現場管理職、労働組合、従業員代表といったステークホルダーを整理して、適切に巻き込むことも不可欠です。
人事が果たすべき役割と社内を動かすためのアプローチ
経営層を動かすデータ活用とプレゼン手法
経営層を納得させるには、主観的な訴求ではなく、データを用いて論理的に説明することが重要です。人的資本開示項目との関連性を説明し、プレゼンティーズム改善額や生産性向上の試算データを示しながら、ウェルビーイング施策のROIを具体的に描き出しましょう。さらに、健康経営優良法人の取得事例など、競合他社の成功事例も交えながら、説得力を高めるのが効果的です。
他部署との連携をスムーズに進めるには
経営管理部門にはKPI設計や可視化支援を、広報部門には社内発信やブランディング連携を、総務部門にはオフィス環境整備などの施策推進を依頼するなど、初期段階から関係部門を巻き込むことがスムーズな推進につながります。プロジェクト型で進める意識が、社内の理解と協力を得る近道です。
ウェルビーイング導入に関するよくある悩み・Q&A
「どの施策を選べばいい?」という悩みへのヒント
現場の健康・働き方に関する課題を整理し、最もニーズが高いテーマから着手することがポイントです。施策ありきではなく、課題ドリブンで施策を選定する姿勢が求められます。
「自社では導入が難しいのではないか」という不安をどう超えるか
完璧を目指さず、実現可能な取り組みに着目することが重要です。少しでも成果が出れば社内の空気は必ず変わります。外部リソースやツールも積極的に活用しながら、変化には時間がかかることを前提に、前進しましょう。
「人事だけで回せるのか」という懸念を払拭するには
人事だけで完結させず、推進役として現場のアンバサダーを育成するのも一つの手段です。また、経営層やマネジメント層の巻き込みにより、施策の推進力を補強し、さらに運営業務はデジタルツールを使って自動化していくことで、人事の負担を軽減しながら施策を推進することが可能になります。
まとめ
まず、現場の声をヒアリングしてみる。小さな施策をひとつ試してみる。KPIを1つだけ設定してみる。このように、小さなアクションを起こすことが、組織変革の第一歩になります。
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